矯正治療の問題の一つに、治療期間の長さがあります。
現状では、至適矯正力が働くと歯は一か月に1mm動くと考えられています。成人矯正は、通常、2年くらいかかります。
ワイヤーによる矯正治療は、レール上に乗っけた列車で例えられますが、速く移動させるにはどうしたらよいでしょうか?
列車のような金属でできた固い箱状ものは、押す力に比例して速く動きます。しかし、歯は、豆腐のように柔らかいものの中に埋まっているのではありません。歯の周りには少しの歯根膜腔という空隙があり、その周りを歯槽骨が覆っています。歯根膜には血管や神経、繊維があり、骨膜と接していますから、あまりに大きな力を=圧力をかけると、血行障害が生じて、歯の動きを阻害するばかりか、圧力のかかった位置から少し離れた部位で骨吸収が起こると考えられています。
つまり、歯を動かすには適切な力=至適矯正力、が重要になります。
更に、力をかける時間、方向も大事な要素になります。加えて、ワイヤーの場合では、ワイヤーとブラケット間の摩擦もマイナスに働きます。反対に、ゆるゆるのワイヤーでは、歯をしっかりとコントロールして動かせないという問題があります。
ならばと、歯を速く動かすには、単に力の要素ではなく、歯を取り巻く歯周組織の細胞活性・反応を速めることに着目されます。外科的に、骨に穴を空けたり、骨を切ったりする方法がありますが、見方を変えると、外科的侵襲(生体の破壊的ダメージ)を与えて、治そうとする細胞の活性が高いときに歯を動かすもの、という見方もできます。しかし、効果は短期的です。繰り返し手術は不可能ですね。
最近の加速矯正装置の代表的なものは、毎日、歯や歯周組織に振動を与えるもの、光によって細胞活性を高めるもの、などがあります。写真は、国産の装置で、歯の振動を与える装置です。
アライナー治療において、抜歯の症例では70数組必要です。1装置1週間交換で1か月4組使うとしたら、20カ月は見ておく必要があります。これが5日、あるいは3日交換で行けるならどうでしょうか? 治療期間が半分になりますね。
問題は、二つあります。上記のような世界的に知られている外国製品を購入するとしたら、わが国ではまだ薬機法で認可されていない、装置代が別途必要で高い、です。Time is money、とはよく言ったものです。
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