患者さんが思春期になると、お母さんから『最近、この子の下顎が出てきて、なんか顔がゴツくなってきたようですけど』と聞かれることがあります。私は、「これは、装置や治療の影響ではなく、成長発育によるものです。お子さんは○○さん(お父さんかお母さん)のお顔に似てきましたね? 遺伝です。」と言います。
矯正治療は歯だけが問題になるのではなく、歯を支える顎や顔面の形態・大きさ、位置関係にも大いに関連があります。
お子さんが、オギャアと生まれたときからお顔は、死ぬまで変化していきます(図参照)。
5歳で矯正治療にいらっしゃったお子さんのお顔は、年齢とともにそのまま風船のように同心円状に大きくなるわけではありません。
お顔の横幅、奥行き(深さ)、長さ(高さ)の成長量、速度そしてこれらの比率、が変化します。経年的にみると、お顔ははじめ幅が増大し、ついで深さ、高さの順で発育します。部分的では、上顔面部は下顔面部より早く成人の大きさに達します。観点を変えますと、大人らしさは下顔面の発育によって達成される、ということになります。
では下顎は、いつまで成長するのでしょうか?
それは、健常者の場合では身長の伸びが止まる時期と考えられます。個人で異なりますね。
ですから、顎変形症の手術は、一般的に成長終了以降に行われるのです。地震で地面が動いているときに家を建てませんね。地面が安定して、土台の関係がしっかりしてから家を立てます。
矯正における土台とは、上顎骨、下顎骨となります。