今私は、1年まえから新しい矯正歯科治療に関する”まとめサイト”の監修作業をやっています。主な内容は、ここに掲載される文章(内容)の原稿を書いたり、ライターの人が書いたものを手直ししたり、また校正などを行っています。
その中で”セラミック矯正”についての記述があります。業者さんに伺うと、『ユーザーに高い関心がある言葉』だから、との回答が返ってきました。私は、これまで、歯科や、衛生士さん、技工士さんの辞典にかかわる仕事をしてきましたし、矯正歯科学会には毎年参加もしています。そして、ネットも毎日のように見ています。おこがましいですが、その私が知らないのです。えっ、新しい矯正歯科治療???
どうも、補綴分野の方から、勝手に出てきた用語のようです。
前にもここで、芸能人の方の補綴処置について記事をUPさせていただきましたが、これらの治療は、矯正歯科治療の内容では全くありません。歯を削って、人工的にセラミック冠をかぶせて、悪い歯並びを綺麗にする処置です。
”悪いことを正す”、という意味では矯正と言えるかもしれません。矯正という言葉は、他の分野・業界でも使われます。犯罪を犯して刑務所に入っている方が、更生の一貫としてタンスや家具などを製作するなどは”矯正所”で行われています。また、美容院では、”縮毛矯正”というメニューがありますね。ですから、私は矯正よりも矯正歯科治療と呼ぶようにしています(少し長くなりますけど)。因みに、学問的には、歯科矯正学と言います(ややこしい)。
話を戻しまして、こ゚のセラミック矯正、昔から行われています。芸能人の方など、矯正装置を付けられない、短期間で済ませたい、などの理由ですが。その中で、おぎやはぎの小木さんは立派なものです。堂々と装置を付けてTVに出演していました。小柳〇子さん、松〇聖子さん、さん〇さん、などなど。
このようなセラミック矯正ですが、大きな問題は二つあります。一つは、健全な歯を1本~数本削って、中には抜いて、元々の歯の根の向きとは違って頭の部分(歯冠)にセラミック冠を被せ揃えるので、様々な無理があります。さらに、八重歯の犬歯を抜いたり、歯の位置が上下にずれていたりすると、歯茎の高さが違ったりするので、歯肉の手術で他の歯と高さを合わせるなども必要です。
そして、二つ目。『形あるものは壊れる』です。お金をかけて綺麗なものができても、これは人工物ですし、歯の光沢や白さが違うのでプロの目は違和感があります。20代後半で歯茎にピッタリしていたものが、30代も後半になり、増齢から歯茎が下がってきたりして補綴物との境目が見えてきたりします。また、物性の疲労や破壊などで欠けたりもします。そうすると、これらの補綴物を除去して、再度作り直しになります。永久的なものではないのです。大きな費用がかかりますね。
矯正治療費より高くつくことも稀ではありません。矯正歯科治療の装置で、アライナーと呼ばれる目立たない取り外しのものもあります。よくお考え下さい。
私は、お勧めしません。もう一度、申し上げます。これは、矯正歯科治療ではありません。学術用語にもありません。下の写真は、セラミック矯正と呼ばれる真実の一部です(別々の症例)。