矯正治療について

顎変形症の治療

顎変形症は、顎の骨の形・大きさの異常や位置、上下あるいは全体のバランスの崩れが原因 で起こります。上下顎のバランスが崩れているので、顔の見た目の問題だけではなく、かみ合わせがわるくて上手く噛めない、話しづらいといった症状などの機能異常を伴うことが通常です。顎変形症の種類には、上顎前突症・下顎前突症・開咬症・非対称症・ 下顎後退症(小下顎症)などがあります。

顎変形症による問題(かみ合わせが悪い、顎の変形など)を治すため に、原則的には手術前に矯正治療(術前矯正)をし、その後外科手術(顎矯正手術)をします。施術は、一般的に、骨の成長が止まる時期に行います。 手術後に最終的なかみ合わせの調整を目的に、矯正治療(術後矯正)が必要となります。したがって、治療は長期(数年)にわたることになります。

顎の異常があっても、手術をしないで矯正治療を行う場合には、保険は適応されません。

*治療例につきましては、最近、治療前後の写真は掲載できなくなりましたので、下記日本矯正歯科学会のホームページをご参照ください。

日本矯正歯科学会
http://www.jos.gr.jp/about/

口蓋裂の治療

口唇裂・口蓋裂の方の治療は、大きく分けますと、外科、言語、歯、耳の問題などがありますので、単科ではなくチーム医療が必要になります。その中で、乳歯から永久歯までの管理をする矯正科が最も長い期間を担当しています。

特徴として、口唇や口蓋など披裂のある部分の組織量の不足や外科手術によって上顎部の成長発育が影響を受けますので、受け口になることが一般的です。従って、成長期には上顎の発育促進が重要ですが、成長が止まった成人の時期では上下顎のバランスが重要な問題になります。上下顎が前後的にも、水平方向や垂直的にも良好であれば、手術は必要ないのですが、どうしても上顎骨の成長発育がキーとなり、手術になる場合が少なくありません。

また、先天異常で矯正治療の適用が認められる疾患は、唇顎口蓋裂の他に、ゴールデンハ―症候群、鎖骨・頭蓋骨異形成、クルーゾン症候群などもありますので、該当する疾患につきましては、下記の日本矯正歯科学会のホームページをご参照ください。

日本矯正歯科学会
http://www.jos.gr.jp/about/

裏側矯正

リンガル矯正矯正装置が全く表からは見えないように、歯の裏側に装着して治療をします。
歯の裏側では、視野が狭く矯正操作が難しくなるため技工操作や手間がかかります。 そのため、表側の装置に比べ2倍程度の費用となります。

装置の弊害として、舌が装置に触れて喋りにくい、歯が装置に当たり咬みづらい、などがありますが、徐々に慣れていきます。

歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療

インプラント矯正歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療は、金属の人工物(人工歯根)を骨の中に植立させて欠損した歯あるいは歯列の補綴を行うもので、従来のブリッジなどによる支台歯のエナメル質削除や負担増などを回避するものとして適用されています。

骨の中に埋め込まれた人工歯根は、生着すると押しても引っ張っても動きません。 この点に着目して矯正治療での固定源(歯を動かす場合に固定となるもの=動かしたくないもの)に利用したのが歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療です。
インプラント(固定源)となるものは、金属プレートや金属ネジがあり、矯正治療が終了すれば撤去されます。

一般歯科のインプラントと異なるのは、簡単な手技で埋め込みが可能で、埋め込んだ直後から力をかけて歯を動かすことができます。
これまでは、固定源を確保するために患者さまに対し長い時間ヘッドギアなどの装着をお願いしてきました。 しかし、患者様はこのような苦痛から解放されますし、術者では非協力による固定源のロスを心配しなくてもよくなります。

アライナー矯正(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)

目立ちにくい・透明・取り外しOKな矯正システム

インビザライン


マウスピース型矯正歯科装置(インビザライン)は透明に近いマウスピース型をした「アライナー」と呼ばれ、約1週間ごとに次の治療ステージ(歯の移動を変化させたもの)のアライナーに順次交換しながら、最終的にあなたの歯をきれいな歯並びへと導いていくものです。最近は、治療システムや材料などの開発、さらには歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療、ワイヤーの矯正装置と変わらぬ期間で同等の素晴らしい結果を残せるようになっています。

マウスピース型矯正歯科装置(インビザライン)の特徴

1目立たない(透明)
2取り外しができて衛生的
3金属による悩みも解消
4患者様一人ひとりにカスタマイズ
5世界中で認められている(400万人以上の利用者)

●殆どの不正咬合の方に適応できますが、やはり向き不向きがあります。歯科矯正医の診断が必要です。
●アライナーは、矯正歯科医の指導の下、基本的に一日20時間~22時間の装着が最も効果的です。食事と歯磨きや装置の清掃時は外して構いません。しかし、最近材質が改良されて、食事でも装着可能となっています。
※完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

※インビザライン・アライナーは、以下の決められたことがあります
①日本国薬機法上の医療機器として認証・承認を得ていない装置であること
②本装置は、米国アラインテクノロジー社の製品でグローバルに使用されていますが、わ
が国では、インビザライン・ジャパン株式会社を介して入手しています
③国内では、マウスピース型矯正装置として医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受け
ているものは複数存在します。
④1998年にFDA(米国食品医薬品局)により医療器機としての承認を受けています
⑤本品は、完成物薬機法対象外の矯正装置であり、承認薬品を対象とする医薬品副作用被
害救済制度の対象外となる場合があります。
⑥ ①~⑤の理由につき、担当歯科医の全責任において使用されるものであること。

光学3Dスキャナーについて

これまでマウスピース型矯正歯科装置(インビザライン)で治療するためには、シリコン印象という方法で精密な歯並びの型取りをする必要がありました。しかし、シリコン印象材は流動性が高く、喉の奥の方まで流れて行ったり、硬化時間が長い、さらには、一旦硬化すると固くて取り出すのが大変だったりと、特に、歯と歯の間に空隙のある成人患者の方、などにかなり負担の大きいものでした。そこで、当クリニックでは、本年12月に口腔内スキャナー「iTero element」を導入いたしました。口腔内スキャナーを使用して、お口の中を光学スキャンすることにより、型取りすることなく歯並びをコンピューター上に3Dで再現することができます。精度もiTero elementの方がシリコン印象より優れています。
これで、アライナーの完成納品までの期間が5日ほど短縮されました。その他、付属のソフトウエアを使って、短時間で簡単な治療結果のシミュレーション説明や、治療中の時期の違いによる歯の移動の重ね合わせなどができるようになりました。

ご参考にYoutube動画をご覧ください。

成人矯正治療について

不正咬合による影響

不正咬合は、次のようなマイナスの影響を、生活のさまざまな面にもたらします。

食べものがうまく噛めない

例えば、出っ歯で開咬の方は、前歯で麺類などがうまく噛み切れず、勢い飲み込んでしまうなど、胃腸に負担がかかります。

歯がよく磨けない、磨き残しができてしまう

虫歯や歯周病の原因となり、歯を失う時期も早くなります。

顔立ちに影響する

コンプレックスを感じる、人前で笑えないなど、心理面の問題が起きることがあります。

発音に影響する

話す言葉が、聞き取りにくい発音になることがあります。

社会的評価に影響する

日本では八重歯はチャーミングとされていますが、国際社会においては、歯並びの悪さはマイナス評価につながりやすいものです。不正咬合があるために、これらすべてのマイナスを日々感じている方もいらっしゃいます。

歯並びをよくすることで一気に解決するのですから、ぜひ矯正をお勧めします。

成人矯正治療はこのような状態の方にぜひお勧めします。

矯正が必要な歯の状態を、総称して「不正咬合(ふせいこうごう)」といいます。
「歯列不正」「咬合異常」と呼ぶこともあります。
具体的には次のような症状があります。これらが複数重なって起きている場合も多くあります。

デコボコ

デコボコ歯並びがひどく不揃いで、雑然とした状態をいいます。
不正咬合の中ではもっとも多いタイプです。

専門的な言葉では、「叢生(そうせい)」、「乱杭歯(らんぐいば)」といいます。
最近では八重歯をかわいいという若い世代の方々もいますが、「八重歯」はこの仲間に入ります。

出っ歯

お顔を横から見た場合、おでこに対して、歯が前方に飛び出している状態をいいます。
出っ歯にも数種類あります。
上あごの歯が前に出ていて、下あごの歯はちょうどいい位置にある場合と、上あごの歯はちょうどいい位置にあるのに、下あごの歯が引っ込んでいる場合を、専門用語では「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」といいます。
これらの組み合わせが原因となっている場合もあります。

上あごの歯と下あごの歯が両方とも前に出ている状態は「上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)」あるいは、「両顎前突」といいます。

受け口

下あごのほうが上あごより前に出ているために、前歯のかぶさり方が普通と逆になっている状態をいいます。

専門的な言葉で「反対咬合(はんたいこうごう)」、「下顎前突(かがくぜんとつ)」といいます。因みに、奥にある歯が反対になっているのを、「交叉咬合」と呼びます。

すきっ歯

歯と歯の間が、ところどころぴったりつかず、隙間が空いている状態です。
専門的には「空隙歯列(くうげきしれつ)」といいます。

上の前歯の真ん中が離れている人は、「正中離開」と言い、言い伝えではここからお金が漏れるから良くないとされています。
真偽のほどは分かりません(笑)

矯正歯科治療の一般的な治療回数と数院回数

矯正歯科治療の期間は、一律ではありません。個人差はもちろんのこと、不正咬合の状態、問題点の複雑性、治療計画、装置、治療開始時期、患者の年齢、歯列の状態(乳歯列、混合歯列、永久歯列)、などによって変わります。あえて一例を挙げるとしますと、20代女性で凸凹(叢生)を、小臼歯抜去してマルチブラケット装置で治療する場合では、治療期間は2年半と説明しています。

マルチブラケット装置では、月1回の通院をするとして、通院回数は30回となります。この年数や回数は、あくまでも歯を移動する・並べて仕上げるまでの期間(動的治療)期間)であり、その後の“保定”期間は含まれておりません。当院では、『保定期間は極力長期で』と説明しています。動的治療期間より長くなりますが、保定当初の通院頻度は3か月に一度となり、徐々に半年ごと等になって行きます。

矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用

矯正歯科治療を円滑に進め満足いただける良好な治療結果につながりますように私どもが最善を尽くすのはもちろんですが、患者さんによるご協力と治療に関する理解・知識を共有していただく必要があります。

矯正歯科治療には様々な起こりうるリスクと副作用などがありますので以下にご紹介いたします(考えられる範囲で列挙しています)。

1.最初は矯正装置による不快感、粘膜損傷等があります。数日~1週間程度で慣れていきます。
2.歯が動く痛みを感じます。8~10時間後に現れることが多く、2~3日をピークに徐々に減少し、5~7日程度で消失します。程度や期間は個人差が大きいです。
3.歯の動き方やその速度には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性もあります。
4.装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、恒常的な通院の有無等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、治療結果や治療期間に影響します。
5.矯正治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。先ずはご自身が日々、丁寧に歯磨きを行うことが基本となります。さらにかかりつけ医等による定期的な口腔内の清掃や歯磨き指導など、歯科医師や歯科衛生士による定期管理受けて頂く必要があります。
6.歯を動かすことにより歯の根が吸収して短くなることがあります。治療上の特別な問題や理由がなくても、歯根吸収の発生しやすい素因のある方は吸収が生じる可能性があります。
7.歯肉が根もとの方へ退縮することがあります。また、それに伴うブラックトライアングルが生じることがあります。特に叢生の強い成人の矯正治療で出現しやすいと言えます。転んで前歯を強く打った、歯が欠けたなどの外傷も影響します。
8.ごく稀に歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。骨性癒着(アンキローシス)と呼ばれるもので、外傷の既往がある場合に起こりやすいものですが、原因不明の場合もあります。
9.ごく稀に歯を動かすことで歯の神経が障害を受けて壊死することがあります。外傷の既往がある場合に起こりやすいものですが、原因不明な場合も多いです。
10.治療途中に金属アレルギーの症状が出ることがあります。
11.矯正治療中にも顎関節で「雑音が鳴る、痛い、口が開けにくい・閉じにくい」などの顎関節症状が出る可能性があります。
12.適切な咬合関係の構築のため、歯の形態修正や、咬み合わせの微調整(咬合調整)を行う可能性があります。
13.様々な問題により、当初予定した治療計画の見直しや変更をする可能性があります。
14.診断後、治療に必要な場合には健全歯を抜歯(便宜抜歯)して治療する可能性があります。
15.何らかの原因で矯正装置が破損したり、その矯正装置を誤飲したりする可能性があります。装置の破損の際には、速やかにご連絡下さい。
16.治療中に歯のエナメル質にエナメルクラックと呼ばれる微小な亀裂が入る可能性があります。これは食事や咬み締めなど様々な原因で日常生活においても起こるものです。ほとんどの場合は症状がなく治療の必要もありません。また同じく治療中にもかぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
17.治療後、歯は元の位置に戻ろうとする傾向があり、これを後戻りと呼びます。そのため、保定装置(リテーナー)で後戻りを最小限に抑える必要があります。指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。また、定期的な経過観察をお受け頂けない場合には後戻りが生じる可能性が高くなります。装置の紛失や破損は直ちに対応する必要があります。
18.保定装置を使用しても顎の成長変化、歯周病、舌や口唇の癖、口呼吸、歯ぎしりなどにより歯並びや咬合に変化が生じることがあります。
19.治療後に親知らず(第三大臼歯)が生えることにより、叢生が生じる可能性があります。埋伏の場合もあります。
20.加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯ならびが変化することがあります。
21.治療後には、現状のかぶせ物(補綴物)や詰め物(修復物)などの再製作が必要となる可能性があります。
22.上下顎関係の著しい不調和のある場合には外科的な手術を併用した矯正治療が必要となることがあります。その場合は口腔外科・形成外科と連携した専門医院をご紹介します。
23.治療には一定の限界があり、骨格の不調和や歯の大きさの問題から、顔のゆがみを治したり、完璧な咬み合わせを構築したりする事ができない場合があります。一方で、矯正歯科治療が顎口腔機能に悪影響を及ぼすと判断された場合、治療ゴールを妥協したり、治療を行わない選択となったりすることもあります。