ブログ

思春期性歯肉炎

患者さんのお母さんから、

取り外し式装置であるマウスピース型矯正装置(写真右下)によって、歯肉が伸びてきました。装置が原因でしょうか? 装置はお休みしています。と問い合わせがありました。

さて、装置を外して一か月以上経過しお口の中を拝見すると、歯茎の色は赤黒く、腫れていて硬い。歯茎のラインは不規則で、上の前歯の歯頚部(歯が括れて小さくなっているところ、歯と歯茎の境目)は見えない。被さった歯茎と歯の隙間に探針を挿入してみると、歯茎まで相当深い(歯周ポケット++)。

Exif_JPEG_PICTURE

さてはアレルギー? しかし、当該装置の材質は塩化ビニール製。日本でのアレルギー報告はないと言います。

ビニール製品は、日常生活で触れることの多いもの。患者の顔や手足に湿疹や発赤・かゆみなども一切ない。そして、歯もほどほど綺麗。ではなぜ?? アレルギー科に紹介することにしました.

*塩化ビニール製手袋によるアレルギー性接触皮膚炎の報告があります。

**装置のメーカーに問い合わせるも、成分までは企業秘密ということですが、主材料はヘキサモールディンチ(「ヘキサモールディンチ」は、安全性が重視される用途向けに開発した可塑剤で、最近は玩具や医療機器への使用が注目されている。同製品に対しては、欧州食品安全機関(EFSA)が肯定的な評価を行ったのに続き、欧州委員会の指令の4th Amendment で食品に接触する材質として使用が許可され、今後は、包装用フィルムやチューブ、シールなど、食品と接触する製品への使用の大幅な増加が期待されている。日本では、ヘキサモールディンチは非フタル酸系可塑剤として「塩ビ食品衛生評議会」から、水溶性食品への使用が認められているが、さらに油性食品への使用認可を申請中で、年内の認可取得を目指している。).http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1182142664.pdf


私の診断は、思春期性歯肉炎(+)の疑い。

小学校高学年から中学校までの二次性徴期に見られます。
したがって、男の子よりも女の子の方が早くでてきます。
前歯に多く見られ、思春期の性ホルモン分泌が歯肉感受性を強くさせる、とされています。

おそらく、増殖した歯肉が、装置を装着したときに歯や歯茎を圧迫して、柔らかい歯茎が伸びてきたものと推察します。左上の写真は、装置を外して一カ月以上たった時の状態です。

体の中のことですから、直ぐには治りません。しかし、なるべく歯周ポケットに中に歯周病菌が溜まり、歯周病に悪化しないようにしなければなりません。歯のお掃除と歯肉のマッサージが大事ですね。

アレルギー科の診断を待つことにします。